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中世における写本装飾

装飾文字は御注文に応じてお作り致します。英語か仏語にて御 連絡下さい。

歴史

羊皮紙に描かれた写本装飾。それは中世の書物を
舞台に花開いた芸術です。天然の顔料、金箔、没
食子インクを使ったこの中世の技法を現代に蘇ら
せようと、作品の製作のほか、デモンストレーシ
ョンや講習会を精力的に行っています。

作品は中世の技法そのままに製作されています。
羊皮紙も手作りです。歴史に忠実でありたいとの
思いから、皮と石灰だけを使用しています。

パピルス

パピルスは紀元前3千年頃にエジプトで誕生しま
した。ナイル河畔に生長する同名の植物の茎を原
料とし、軽くて安価なのが特徴です。巻紙のよう
に使えるので大きな作品が描けますが、破けやす
いので細心の注意を払って筆を進めなければなり
ません。


Texture papyrus Originally uploaded by ToNToN CoPT

Papyrus Originally uploaded by ubichan

Papyrus Originally uploaded by wild boni
羊皮紙

羊皮紙は紀元前2世紀頃、ペルガモン(現在のト
ルコ)のエウメネス2世により初めて作られたと
いうのが通説です。

初期の印刷本(木版活字版)にも羊皮紙が用いら
れていました。しかし、現在では一部の公文書や
「トーラー」(モーセ五書)、そして芸術創作の
場においてしか使用されていません。

元来羊皮紙は、なめしが不十分なありふれた日干
しの皮に過ぎませんでした。この製造法は、楽器
を作るのに今でも一部の国々で使用されていま
す。ヨーロッパでは動物の毛を落とすのに日干し
だけでは不十分なため、生石灰の液に漬けて処理
していま

まず皮から毛を除去する作業をします。皮を石灰水に漬けることで、毛状根のある表皮層が破壊されます(羊皮で4~5日)。インターネットではまだ匂いまでお届けできないのが残念です。なにしろ、わずらわしい隣人や空き巣の撃退にはうってつけの匂いなのですから。

最後の一本まで毛を剥ぎ取り、よくすすいだ後、皮を広げて屋外に干します。これにより、大気や湿度の変化に強く、千年以上も良好な状態を保つ素材へと生まれ変わります。

あとは両面を丁寧に磨き、絵を描くばかりです。


中世における写本装飾

中世における写本装飾技術は書物の中に見出すことができます。書物は主に持ち運びに便利な冊子の形で製本されており、光や汚れから中身を守ることができました。そのため、当時の姿そのままに現在にまで伝わるものもあります。

写本装飾には図像上のいくつかの取決めがありますが、時代や地域(国や修道院など)ごとにヴァリエーションがあり、写本者にはどんな場合にも、自分の芸術を披露し、様々にアレンジを施すことが許されていました。テキストはほぼ忠実に書き写されましたが、図柄の方はいつもわずかに変化を加えて描かれていたのです。

中世に使用された道具

羽ペン

主に鵞(その他カラスや大型の鳥)の羽が用いられました。羽の先端はナイフで平らに削られ、その部分の幅が線の太さを左右しました。先端を鋭く削った葦ペンも使用されました。

ナイフ

特に羽を削ったり、羊皮紙をこそげるのに使いました。

定規・コンパス

羊皮紙の寸法を測るのに使用されました。

容器

貝殻、土器などが利用されました。

各種哺乳類の毛やヤマシギの翼の先端部にある小さな羽根が用いられました。

中世の技法

蝋を塗った木板に尖筆(普通は金属の細い棒)で下書きをします。

まず、位置を決めるために細い線を引きます。

- 本文(茶色か黒のインクが使用されます)

- 飾り頭文字

- 章や段落の最初におかれた彩色文字(これにあたる仏語"rubrique"はラテン語の"rubrum「赤」"からきています。

鉛丹が使用されました)

- 挿絵

- 枠

いつも単独で作業全てをこなしていた訳ではありません。修道士の中には本文を専門とする者や挿絵を専門とする者もいました。文字の読めない人にも内容を理解してもらうため、挿絵は細かいところまで本文に忠実にしかも象徴的に描かれました。さしずめ現在の「漫画」の原型とも言えるでしょう。

中世初頭において、挿絵の背景にはイコンと同様金箔を施すのが一般的でしたが、その後、技術の発達と交易の発展からスタイルは様々にアレンジされ、新しい様式が続々と生み出されていきました。伝統的には、挿絵を際立たせるために輪郭の線をインクで描く技法が用いられました。

本文用のインク

インクはその成分によって黒か茶色をしていました。カラーインクは非常に高価なものだったので、タイトル文字にのみ使用されました(赤=鉛丹等)。

最も簡単な黒インクは、煤をよくすりつぶし水と混ぜたもので、はるか古代より使われていました。光には耐性がありましたが、擦れなどに弱いものでした。

タンニンと金属から作ったインクは湿度に大変強く、一旦乾くと滲むことがありませんでした。材料を煮詰めるか沸騰させると、蒸発により濃度が高められ、茶色味を帯びた液体が得られます。インクを安定させるために使用された最も原始的な方法とは、真っ赤に熱した鉄か銅のかけらを液体に浸すことでした。その後、粘りを出すためにアラビアゴムか皮の膠を加えました

顔料

中世においては、油絵の具、グワッシュ(15世紀)は使用されておらず、色チョークなどは論外でした。中世初頭、インクや顔料の製造法を把握していたのは修道院の写本室でした。

染料

様々な色彩を作り出すために、一風変わったものも含め多岐にわたる原料が用いられました(ワイン、尿、蜂蜜、卵、昆虫など)

コチニール(潰したエンジムシ。今でもハム等の着色に使われています。)

赤紫染料(地中海産のアクキガイから抽出します。赤紫色の染料は大変に高価で、古代ローマでは皇帝の色とされていました。)

黄色

色黄(毒性の強いヒ素を含む石で、黄金色が得られました。)

オーカー土(そのままか焼いて用い、茶黄色からオレンジ色まで作ることができました。)

鯉の胆汁

サフラン(ハナサフランの花粉)

クサノオウの汁(写真)

青金石(ラピス・ラズリとも言われる濃紺の鉱石)

藍銅鉱(様々な濃淡の藍色の鉱石)

孔雀石

緑青(アセテートやその他の塩基性銅)

白鉛(塩基性炭酸鉛を含む白い猛毒の顔料)

金箔

金が最も好まれましたが、銀や合金も使用されました。

金属板の間に原料となるシートを挟み積み重ねたものを金床の上に置き、金箔師という専門の職人がハンマーで打ちます。数日これを続けると、シートの薄さは数ミクロンとなり、非常に緻密な技術で図柄に貼り付けることができるようになります。シートはその後、瑪瑙または猪や狼の刃で磨かれました。

装飾文字およびカリグラフィー

これらの装飾文字やカリグラフィーはすべて手書き、世界でたった一つの作品です。中世の技法に忠実に、複製技術は一切使用していません。だから作品はひとつひとつ違います。羊皮紙も石灰を使用した自家製です。

Florence Bremond (フロランス・ブレモン)
中世写本装飾文字アーティスト
2, Grande rue
85130 Tiffauges
France

© Flo 2010